現実社会の中で、正義漢が正義漢であるためには、かなり高いハードルをいくつもいくつも乗り越えていかねばならない。理想を追求する正義漢が簡単に理想を追求することはできない、世の中の現実の厳しさが、ストーリー10話のあちこちに表現されていて、とても現実味、リアリティ溢れる内容で面白かった。
例えば、冤罪事件が冤罪になっている重要なファクターの1つだった、容疑者を目撃したという証言者について、この証言者の男がでたらめな奴で目撃などできているはずもない情報を得たことを、周囲の協力的な弁護士や報道仲間に相談せずにスクープ的に流してしまったことで、でたらめ証言男が逃亡してしまい、かえって冤罪を証明することが不可能になったいきさつとか、一筋縄ではいかない無実の証明の困難さがうまく表わされていた。
前回リンク
が、、、、視聴率をとるには、というか、一般受けするには、もう少し分かりやすくするとか単純化を図る必要があったかもしれない。あとは、ゴードン(眞栄田郷敦)の役柄が若すぎの弱すぎキャラに終始した点が残念だったかもしれない。彼の演技力、どんな役にも適応できることはわかったので、視聴者や彼のファンがゴードンに期待していること(2枚目アクションスターの血筋)をもう少し意識できなかったのか!と感じたよ。せめて、彼のトラウマになっている学生時代の友人の自殺みせかけ事件に、勇敢に立ち向かうとか、描けなかったのだろうか?
「長い物には巻かれろ」的な報道番組、真実の報道で大物政治家を敵に回すよりも、現実に妥協し自分たちの番組の立場を危険にさらすことはせずに、番組制作に関わる人たちの生活を守る姿勢をとり続けている、NEWS8(ニュースエイト)。FujiTVが8チャンだけに、色んな意味で興味深い。
その番組キャッチフレーズ「真実をまっすぐに」に恥じないよう、そのまんま守ろうと、報道先輩の岡部たかし(村井さん)の暴動によって気づかされた長澤まさみが、完全に自信を失って自分を失くしてしまったゴードンに迫るシーンもよかったぁ。「もう私は逃げるわけに行かない。なんで殺されなきゃいけないのよ!何でなのよ。何の罪もない人がこれ以上犠牲になるのを見ていられない、当たり前のことじゃん。このまま、心の中の一番大事なものを押しつぶされながら、どうやって希望をもって生きて行けばいいんだよ。」の長澤まさみの吐露は圧巻だったぁ。
でも、僕が感涙したのは、最終回、スクープ報道の影響がおちついて、長澤・ゴードン・岡部が再出発するラストシーンに被せて、冤罪から解かれた松本おじいちゃんと三浦透子が生活しているようなシーンであった。二人が、透子の作ったカレー、準備したショートケーキを食べながら、過ごしているたった50秒弱の描写である。無垢な松本おじいちゃんが頬張る様子とそれを確かめながら、自然と涙がこぼれる透子の表情が胸を打った。もちろん、真実を追い続け取材を続けたゴードンや長澤まさみの頑張りや葛藤の過程があっての、最後のこのシーンなのだが、さすが、アカデミー賞・国際長編映画賞受賞作品の女優は違うね。
お題リンク振り出しへ